渇きと断章

「ふたしかな私」をとらえて詩のような文にしたい

無であること

「無」というものに 惹かれている
たとえば無目的であること
何をしたら良いか分からなくなったとき、目を閉じて自己の海のなかを目的もなくゆらめいている
そこではただの“何もないじぶん”
勝ち負けの世界やすべてを征服しようとする自意識から、ひとり、ゆるゆるとほどかれてゆく
いっさいの勝負の土俵には上らない

自己の海のなかをふかくふかく潜っていると、どうしてか私のすがたは無くなってゆく
名づけられる前のわたし
ただひとつのいのちとしてのわたし
何の境界もなく 自然のなかに渾然一体となっているわたし
そこには生命のともしびだけが宿る