渇きと断章

「ふたしかな私」をとらえて詩のような文にしたい

物を書く衝動は燃える

前に書いたように、私には是が非でも書きたいという気持ちがあんまりない。
ところが、いついかなるときでも私に「書け!」と命じるものが胸のうちにある。それは私の身体のなかで怪物のように火炎を吐く、物を書く衝動だ。すらすらと書けるときはもちろん、一文字も書けない時には尚いっそう燃え上がらんと欲し、その炎に灼き尽くされそうになる。
それは、「私を証明するために!」と自分に迫ってくる。『私を証明する』とはどういうことだろう。

私はふだん、大変うだつの上がらない人生を送っている。しかも、学習的無力感が身にしみているとでも言うのか、そのことをしょうがないと受け入れかけてもいる。この「受け入れかけている」というのが問題だ。そうでない自分もいる。それは私が自分自身の力を発揮し未来を自ら切り開いてゆくことを望んでいる。ゆえに、この生きることのおぼつかない私に対して決して許すことのできない怒りにふるえている。「物を書く衝動」とは、このもうひとりの怒れる私のことなのだ。いつもぐうたら生活しかしていない私に怒り、書けるときにも書けないときにも自分自身が本来持っている“はず”の力を証明しろと迫る。本当にそんな力があるかも分からないのに。

怒れる私ははるかな夢を見ている。いつかきっと書くことで誰かに認められるのだと。