渇きと断章

「ふたしかな私」をとらえて詩のような文にしたい

詩「傍感する」

風が流れるあいだ
目を閉じていると

どうしてこの世のひとひらは
やすらかに私を通り抜けてゆくのだろう。
この身はさざめきとともにうつろになり
全てはやさしくゆられて目を覚ます。

いつも責められていると感じたのは
近所の子どもたちの遊ぶ声
まぶた 閉じられた 世界で
それは新しい夏の水しぶきになる。
いつも後ろめたく感じたのは
何かしなきゃいけない昼の時間
風が 解きほぐす 世界で
それは何もできなかった私にも
熱のこもった手をさしのべていたと知る。

見ることを休んだとき
責任のかたまりみたいな重い肉体をはなれ
生まれる前の大気にゆらめく原素のように
死したる後の火葬場から昇る白煙のように
私は吹きめぐる風と溶け合って、
意識が地平にまで広がってゆく気がするのだ。

 

 

 過去(2年ぐらい前)に書いた詩をアップしました。